東大王の作り方

本を何度も読むとスラスラ読めるようになり、「わかった」と思いがちです。

しかしこれは「流暢性の錯覚」といって、実はほとんど記憶に残っていません。

一文字ずつ読んでは考え、時間をかけて入力するほうが、

面倒ですが学習効果が高いのです。

このように、今までいいと思っていた入力方法が、

実はまったく効果がない場合があります。

まず、情報は一つの入力方法で覚えるよりも、

複数の方法で入力するほうが覚えやすくなります。

例えば同じ内容の学習でも、講義を聞く、文章を読む、映像を見るなど、

入ってくる刺激が違うと、脳のそれぞれ違う領域が反応します。

なるべく広範囲に刺激を受けたほうが、脳は活性化するのです。

同じように、複数のテキストを同時期に読むとよいといわれますが、

できれば違う分野のテキストを数冊読むほうが、記憶の干渉が起こりにくいでしょう。

また、今日は国語、明日は算数などと一日中同じ科目を勉強するより、

一日に複数の科目を勉強するほうが、記憶が定着します。

一気に詰め込むとその時は覚えていても、数日後には忘れてしまいます。

一見効率は悪そうですが、毎日少しずつ複数の科目に触れるほうが脳への刺激が多く、

長期的に記憶に残るのです。

複数人でのグループ学習も、長期記憶の定着に役立ちます。

人間の脳は他の人がいると、敏感に反応します。

美術館で一人で絵を鑑賞するよりも、

何人かで見た時のほうが感動の度合いが大きかったり、

一人きりの食事より周りに人がいる時のほうが料理をおいしく感じたりします。

その場合、会話などのコミュニケーションがなくても、

同じ経験を共有するだけで感情が増幅されます。同様に、

一人で単語リストを見るよりも、二人で見るほうが、

約2倍も単語を思い出せるという実験結果があります。誰かと共有したものは、

より記憶に残りやすいのです。

さらに、リビングや図書館での勉強は、脳科学的に見ると悪くありません。

もちろん気が散るほど騒がしいのは問題ですが、

逆に無音状態だと集中力が落ちるということも、

ネズミの実験で明らかになっています。確かに、

シーンと静まりかえった環境だこソワソワして、勉強に意識が向きません。

例えば、記憶に効果があるといわれているのが雨音です。

パソコンのファンの音、扇風機、木の葉のこすれる音、風鈴などもいいでしょう。

こうした環境を整えれば、入力した情報がより記憶に定着しやすくなるでしょう。